ある実業家が、問題に直面し、夜も眠れない状態だった。部屋の中をうろついていると、母親の写真が目にとまり、母の言葉を思い出す。家族が困難に直面すると母親いつもこう言っていた。「問題のことではなく、神様のことだけを考えましょう」と。そこで彼は、「今しばらくは、問題から目を離そう」と言って、机の上の書類全て引き出しにしまった。そして別の引き出しから聖書を取りだし、椅子に深く腰かけ、詩編から読み始めた。彼はそのまま三十分も聖書を読み続けた。自分がよく知っている聖句へとページをめくり、偉大な御言葉を声に出して読んだ。そして、聖書を閉じ、静かに神のことを思った。神の善とその素晴らしさ、摂理、偉大な愛について。最後に感謝の祈りを捧げた。彼は平安を取り戻し、仕事に戻った。すると、ある人物に会おうという思いになる。それは今直面している問題とは全く関わりがない人だった。しかし祈った直後の思いだったので、出かけた。彼と会うと、何気ない会話の中からある発想が生まれ、問題が解決へと導かれた。それ以来、彼は大きな問題に直面すると、いつも神に集中できるまで、問題には目をやらないようにした。十分神に心を向けられるようになってから問題に向かうと、平安のうちに洞察力が与えられ、解決に導いて頂けるのだ。
この牛込でも似たようなことは起こっている。二十五年前、資金もないのにこの場所に教会堂を建てようという発想が私に与えられた。老人ホームなどの施設を造ろうかといろいろ発想したが、祈りの中で、何よりも福音を直接宣教する教会を建てるという思いになった。次は融資先だ。今度は父が祈っていた。教会は建つことには確信があった。しかし、具体的には誰のところに行ったら融資の道が開けるのですか、と祈り、引き出しを開けると、クリスチャンの不動産仲介業者からの封筒がポンと飛び出してきた。祈り終えた直後のことだったので、とにかくお会いしたところ、会堂建築のための二億円を融資してくれる銀行を紹介してくださった。
もうだめだ、と思えるような状況の時こそ、確かな希望をもって祈ろう。そして、神から最善の解決の道を与えられ、苦難に打ち勝つ者として頂こう。
困難を祈りによって突破するために Norman Vincent Peale, The Tough-Minded Optimist より